北アルプス 槍ヶ岳(3180m)、左俣岳(2674.3m)、樅沢岳(2755m)、鷲羽岳(2924.4m)、三俣蓮華岳(2841.4m)、双六岳(2860.4m)、 2016年8月10日〜12日  カウント:画像読み出し不能

所要時間
8/10
 4:04 駐車場−−4:21ロープウェイ駅−−5:14 穂高平−−6:04 白出沢(休憩) 6:23−−7:06 チビ谷−−7:27 滝谷(休憩) 7:43−−8:12 南沢−−8:30 槍平小屋−−9:20 最終水場(休憩) 9:40−−10:32 千丈乗越分岐−−11:51 飛騨乗越−−12:04 槍ヶ岳山荘(テント設営) 12:33−−12:36 槍ヶ岳入口−(渋滞)−12:59 槍ヶ岳 15:29−−15:37 槍ヶ岳山荘(幕営)

8/11
 4:16 槍ヶ岳山荘−−4:46 千丈乗越−−5:42 左俣乗越−−5:57 左俣岳−−6:21 硫黄尾根分岐−−6:28 ??m峰 6:31−−6:39 硫黄尾根分岐−−6:59 硫黄乗越−−7:39 樅沢岳(休憩) 8:18−−8:35 双六小屋 8:37−−8:57 巻道分岐(巻道へ)−−9:23 水場(休憩) 9:33−−10:23 三俣峠(巻道終点)−−10:42 三俣山荘テント場最上部−−10:49 三俣山荘(テント設営) 12:13−−13:30 鷲羽岳(休憩) 16:05−−17:10 三俣山荘(幕営)

8/12
 4:12 三俣山荘−−5:09 三俣蓮華岳(休憩) 5:24−−6:24 双六岳(休憩) 6:47−−7:25 双六小屋−−8:24 笠ヶ岳分岐−−8:47 鏡平山荘−−9:09 シシウドヶ原−−9:35 チボ岩−−9:41 秩父沢−−10:05 沢で水浴び 10:11−−10:15 左俣林道−−10:25 休憩 10:55−−10:59 ワサビ平小屋−−11:15 笠新道入口−−11:19 中崎橋−−11:48 ゲート−−12:04 駐車場


場所長野県大町市/長野県松本市/岐阜県高山市/富山県富山市
年月日2016年8月10日〜12日 2泊3日幕営
天候毎日晴れ!
山行種類一般登山
交通手段マイカー
駐車場深山荘奥の無料駐車場
登山道の有無あり
籔の有無無し。ただし正確な左俣岳山頂を踏むには短距離ながらハイマツ藪漕ぎが必要
危険個所の有無槍の穂先への登りは急な岩場の連続で転落注意
山頂の展望どこも大展望
GPSトラックログ
(GPX形式)
1日目(新穂高〜飛騨沢〜槍ヶ岳)
2日目(槍ヶ岳〜西鎌尾根〜三俣山荘〜鷲羽岳往復)
3日目(三俣山荘〜三俣蓮華岳〜双六岳〜新穂高)
コメント久しぶりの槍ヶ岳へ。3日間とも晴天に恵まれたが午後になってもガスが上がってこず暑すぎてテントに入れなかったし、日中の歩きも地獄の暑さだった。初日は休みを取って入ったため激混みを回避でき槍の渋滞は軽度で済んだ。山の日以降はどこも激混み。下山後に知ったが2日目にはDJF氏が中山沢経由で赤岳登頂に成功していた。


地図クリックで等倍表示
1日目ルート断面図(新穂高〜飛騨沢〜槍ヶ岳)
2日目ルート断面図(槍ヶ岳〜西鎌尾根〜三俣山荘〜鷲羽岳往復)
3日目ルート断面図(三俣山荘〜三俣蓮華岳〜双六岳〜新穂高)


新穂高登山案内所 登山届を提出
右俣林道ゲート 穂高平
白出沢で林道終点 白出沢の水場
白出沢。橋は無いが水も無い 白出沢から見上げる穂高連峰
涸沢岳西尾根入口。目印&明瞭な踏跡あり ヒカリゴケ
チビ谷 滝谷
滝谷の監視カメラ? 滝谷避難小屋
藤木レリーフ 槍平小屋
槍平小屋のテント場
こんな標識が点在 標高2250m付近の最終水場
標高2450m付近 千丈沢乗越分岐(標高2550m)
千丈沢乗越分岐の救急箱 標高2700m付近
飛騨沢を振り返る 飛騨乗越標高(3010m)
槍ヶ岳山荘のテント場。区画番号付き 槍ヶ岳山荘のテント場
槍ヶ岳山荘のテント場
槍ヶ岳山荘と槍ヶ岳 槍ヶ岳ライブカメラ
テントは12番に指定された 設営完了。槍の穂先に向かう

槍ヶ岳と槍沢

槍の取り付き 登りの目印に従って登る
小槍 梯子で渋滞中
槍ヶ岳山荘を見下ろす。かなりでかい 山頂直下の梯子
槍ヶ岳山頂 槍ヶ岳山頂から見た小槍
槍ヶ岳山頂から見た天上沢 槍ヶ岳山頂から見た北鎌独標
槍ヶ岳山頂から見た硫黄岳山頂。ハイマツの海 槍ヶ岳山頂から見た立山

槍ヶ岳山頂から見た西岳

槍ヶ岳山頂から見た穂高連峰
槍ヶ岳山頂から見た燕岳〜大天井岳 槍ヶ岳山頂から見た燕山荘
槍ヶ岳山頂から見た常念小屋 槍ヶ岳山頂の祠。場合によっては写真待ち行列ができる
槍ヶ岳山頂から見た表銀座と常念山脈(クリックで拡大)
槍ヶ岳山頂から見た裏銀座(クリックで拡大)
槍ヶ岳山頂から見た北側の展望(クリックで拡大)
槍ヶ岳山頂から見た硫黄尾根(クリックで拡大)
槍ヶ岳山頂から見た赤岳ジャンダルム群西半分(クリックで拡大)
槍ヶ岳山頂から見た赤岳ジャンダルム群東半分(クリックで拡大)
槍ヶ岳山頂から見た後立山(クリックで拡大)
槍ヶ岳山頂から見た笠ヶ岳〜裏銀座(クリックで拡大)
槍ヶ岳山頂から見た南側の展望(クリックで拡大)
槍ヶ岳山頂から見た赤沢山
槍ヶ岳山頂から見た奥穂〜ジャンダルム
槍ヶ岳山頂から見た西穂
槍の穂先から下山開始 槍ヶ岳から見た殺傷ヒュッテ
西鎌尾根起点。明日はここを歩く テント場
テント場から見た乗鞍岳、木曾御嶽 夕暮れのテント場
2日目。まだ暗い時刻に出発 槍に取り付く光は1つしか見えなかった
窓口はまだ閉まっている さすが北ア。自販機がある
西鎌尾根始点 千丈沢
千丈沢乗越
西鎌尾根を下る 唐沢岳の奥に妙高、焼山が見えた
正面に双六岳を見ながら歩く
やっぱり目が行くのは硫黄尾根。この日はDJF氏が中山沢から赤岳にアタックした。この時刻はまだ右俣林道歩きのはず
槍までの距離ペイントがある 雷鳥に遭遇。槍穂エリアでは初めてかも
雲の向こう側から日の出 前回通過時に登ったか自信が無い左俣岳
左俣岳手前鞍部が左俣乗越 左俣乗越から見た硫黄尾根
左俣谷 左俣岳は山頂直下を巻いてしまう
左俣岳山頂へはハイマツ突破が必要 左俣岳山頂の三角点
左俣岳山頂の展望(クリックで拡大)
左俣岳山頂から見た硫黄尾根
左俣岳山頂から見た硫黄尾根核心部。重なり合ってよく見えない
ハイマツとの格闘の跡。長ズボンを履こう 硫黄尾根分岐を目指す
2680m峰直下。踏跡あり 2680m峰。硫黄尾根方向はハイマツの海
2680m峰から見た硫黄尾根 2680m北側が硫黄尾根分岐。踏跡無し
登山道を離れて少し登ると砂礫地あり 硫黄尾根に乗る
2650m峰の登りはハイマツ 2650m峰から見た硫黄尾根
2650m峰すぐ先の尾根屈曲は痩せて雪が付く時期はちょっとイヤらしいかも
赤岳ジャンダルム群は重なり合って見えている 2650m峰から見た硫黄沢。穏やかそう
2650m峰から見た北半分の展望(クリックで拡大)
2650m峰から見た槍ヶ岳 この谷を下れば登山道
硫黄沢
この天気だと傘は暑さ避けに非常に有効 硫黄乗越
硫黄乗越から見た東側の展望
硫黄乗越から見た硫黄尾根

硫黄乗越から見た硫黄尾根(クリックで拡大)

硫黄乗越から見た赤岳 双六岳方面から次々とハイカーがやってくる
樅沢岳 振り返る
東側にある樅沢岳山頂標識 西側にある樅沢岳山頂標識。この裏が正確な山頂
樅沢岳山頂から見た360度パノラマ写真(クリックで拡大)
樅沢岳山頂から見た北半分の展望(クリックで拡大)
樅沢岳山頂から見た西鎌尾根 樅沢岳山頂から見た笠ヶ岳へ続く尾根
双六小屋へと下る 双六小屋とテント場、双六池
双六小屋。水は無料
双六岳への登り途中から樅沢岳を振り返る
往路は双六岳へは登らず巻道を進む
巻道は緩やかなカールを横断していく
一番低い辺りに沢が流れている 水場で顔を洗ってタオルを洗濯
硫黄尾根が徐々に遠ざかる 三俣峠
三俣峠から見た東側の展望(クリックで拡大)
三俣峠から見た硫黄尾根(クリックで拡大)
一部区間だけハイマツのトンネルで日影が得られる 再び開ける
三俣山荘とテント場 三俣山荘。幕営者も山荘内トイレを使用
テント場。登山道に沿って細長く分布 小屋に近いいい位置を確保
三俣山荘付近から見た伊藤新道跡。明瞭に残っている
伊藤新道跡分岐点。不明瞭 伊藤新道跡分岐点には野生動物観察用カメラあり
伊藤新道跡分岐点から見た赤岳(クリックで拡大)。この頃DJF氏は中山沢出合付近にいた
鷲羽岳へとのんびり登る 急な登り
黒部川源流方面
間もなく鷲羽岳山頂 鷲羽岳山頂
鷲羽岳山頂から見た東側の展望(クリックで拡大)
鷲羽岳山頂から見た北側の展望(クリックで拡大)
鷲羽岳山頂から見た後立山(クリックで拡大)
鷲羽岳山頂から見た硫黄尾根(クリックで拡大)。この写真撮影時はDJF氏は中山沢のコルにいたがここからは見えない
鷲羽岳山頂から見た硫黄尾根赤岳ジャンダルム群(クリックで拡大)。この写真撮影から約45分後にDJF氏が赤岳山頂に登攀成功
鷲羽岳山頂から見た三俣蓮華岳〜薬師岳
鷲羽岳山頂から見た北鎌尾根
鷲羽岳山頂から見た鷲羽池 鷲羽岳山頂から見た立山、劒岳
鷲羽岳山頂から見た硫黄尾根硫黄岳 鷲羽岳山頂から見た燕山荘

三俣山荘のテント場 三俣山荘へとのんびりと下る
鷲羽岳の下りの途中から見た赤岳。この写真撮影時はDJF氏は中山沢出合まで戻っていた
三俣山荘テント場に戻る。テントは日陰に入っていた 最終日の朝、出発
三俣峠から三俣蓮華岳に向かう 日の出
斜面が赤く染まる 三俣蓮華岳山頂
三俣蓮華岳からの360度パノラマ写真(クリックで拡大)
三俣蓮華岳から見た槍ヶ岳〜黒部五郎岳(クリックで拡大)
三俣蓮華岳から見た東側の展望(クリックで拡大)
三俣蓮華岳から見た西側の展望
三俣蓮華岳から見た中央アルプス
三俣蓮華岳から見た常念岳と八ヶ岳
三俣蓮華岳から見た鷲羽岳の影 三俣蓮華岳から見た浅間山
三俣蓮華岳から見た立山〜大日岳 三俣蓮華岳から見た立山、劒岳
西側に立つ三俣蓮華岳山頂標識 三俣蓮華岳から黒部五郎岳への稜線
双六岳に向かう なだらかな稜線歩き
双六岳もなだらか
中道分岐 中道。双六岳を巻いて双六小屋へ行ける
双六小屋発の登山者とすれ違う 雪田は僅か
間もなく双六岳 双六岳山頂。強風で寒かった
双六岳から見た南側の展望y(クリックで拡大)
双六岳から見た北側の展望(クリックで拡大)
双六岳から見た三俣蓮華岳 双六岳から見た槍穂
双六岳山頂標識 双六小屋へ下る
まだまだ登ってくる人が多い 昨日歩いた樅沢岳
双六小屋 双六小屋のテント場。結構広い
双六小屋のテント場。奥は双六池 新穂高へ下山開始
振り返ると鞍部の奥に鷲羽岳 弓折岳の稜線へ上る
笠ヶ岳は山頂だけちょこっと見えている
ベンチありだが直射日光で暑い! 白い砂地を横断
西鎌尾根
板戸岳の尾根
板戸岳山頂 笠ヶ岳、鏡平分岐(弓折中段)
弓折中段の標識 鏡平
鏡平山荘。日陰が無くて暑いため休憩せず通過
鏡平は池が点在 シシウドヶ原。昔は大ノマ乗越へ出る道があった
大ノマ乗越方向。草に埋もれて道の形跡は見られなかった 左俣谷を見下ろす
チボ岩 秩父沢。水が流れていて多数のハイカーが休憩中
登ってくる人の数が凄い ヘリが何往復も荷揚げ中
左俣谷で水浴び。気持ちいい! 左俣林道に出た
ヘリが低空で見えた ワサビ平小屋小屋手前の日陰で休憩
ワサビ平小屋 笠新道入口。水あり
ヘリの荷揚げ基地 ヘリで運搬する荷物の準備中
持ってきた荷物は生鮮食品だろう こちらは卵を持ってきたのだろう
穴毛槍 発電用取水堰
中崎橋の注意書き 中崎橋。右(下流側)に傾いている
穴毛沢に続く林道入口 冷たい風が出ている石の重なり
ゲート到着 最近の長野県の山では良く見る
ゲート 山ねずみ氏のマイカー
路駐の車 路駐の車
穴毛槍P5 有料駐車場も満杯
稜線は雲で見えなくなった 新穂高登山案内所
こちらの有料駐車場も満杯 県道に路駐の車は駐車違反のステッカーが貼られていた
無料駐車場へ下る。日陰は涼しい 蒲田川でテント虫干し
蒲田川。釣り人がいた 無料駐車場。ここも満車


 今年は8/11に山の日が制定された。お盆休みは8/13からで8/12は当初から有給休暇の計画だったが、それに加えて有り余った休暇消化で8/10も休むことにした。これは山の日の前日に現地入りした方が駐車場確保、テント場確保の点で断然有利なことが大きな理由だ。天気予報も申し分ない。

 行き先だが、世間一般よりせっかく1日早く山に入って混雑を避けられるので、あえて混雑する場所を目指すことにした。槍ヶ岳だ。ここは20年近く前に2泊3日で槍穂縦走の際に登っているが、3日間ともガスで何も見えなかった苦い記憶がある。今回は槍の穂先で展望を楽しみたいし、幕営もしたい。前回は暴風雨で幕営どころの騒ぎではなく、テントを担いでいったのに問答無用で素泊まりだった。

 出発地は新穂高とした。槍以外はどう歩くか決めておらず、いろいろなルート取りが可能だからだ。奥穂への縦走も考えたが、たぶん大キレットでオバサン渋滞は避けられないと判断、時期をずらして入った方がいいだろう。となると西鎌尾根を下って双六から先はその時考えることにした。今回は2泊3日の食料を担ぐ。

 新穂高の深山荘奥の無料駐車場到着はPM10:00頃。満車の看板が出ていたが整理員に聞くと空きがあるので入っていいとのこと。最上段は満車だったが2段目は2個所の空きあり。全体では10台くらいの空きだったか。祝日1日前のさらに前夜でこの状態では明日夜にここの確保は不可能に近いだろう。

 翌朝は暗い時刻に歩き出す。星空で快晴らしい。登山指導所で登山届を提出、ルートは槍〜双六〜三俣山荘〜新穂高にしておいた。まだ暗い時刻なので林道を登る人の姿はないが、逆にトイレのためか下る人の姿が見られた。まだ閉まっている有料駐車場入口には2,3台の車が待っていた。

 初日で荷物が重いこと、樹林の中はまだ暗いこともあってショートカット道は使用せず林道を歩いた。穂高平に到着した頃にはすっかり明るくなっていた。白出沢は大きな堰堤ができていて、もしかしたら立派な橋がかかっているかと思ったら何もなかった。今は沢には水も無いけど。ここで軽く休憩。水が引いてあって休憩にはいい場所だ。

 白出沢を渡ると蒲田富士へと繋がる涸沢岳西尾根入口、目印があり明瞭な踏跡もある。もしかしたら私が登った頃よりも笹の中の踏跡が明瞭化しているかも。次は滝谷で小休止。この頃にはポツリポツリと下山者とすれ違う。槍平のテント場は閑散としているが、平日だし時間的にも当然の光景だろう。ここでは休まず最後の水場まで歩く。2年前に硫黄岳に登った際はGPSの電池切れで水場の位置が分からなかったが、今回歩いてみたら槍平から意外に時間がかかった。水場の標高は約2250m、充分な水量があり、濡れタオルで汗を拭う。

 あとは槍ヶ岳山荘まで休み無しで歩こう。天気がいいのは有難いが、この先は森林限界で日影がなくなって暑そうだ。相変わらずポツポツと下山者とすれ違う。半分くらいの登山者はザックにヘルメットをくくりつけている。これも時代の流れだろうが、槍ヶ岳程度ではメットを使うほどの落石のリスクはないような。

 千丈沢乗越分岐を通過、今夏は飛騨沢を直進だ。広大なカールの中を歩くのは気持ちがいいが日差しが暑い! ここまで来るともう日影はない。まだ千丈沢乗越ははるか頭上だが、下ってくる登山者の姿が見える。

 大きなジグザグを切って飛騨乗越へと上がっていく。振り返ると私と同じく登りの登山者が2人ほど見え、徐々に接近してきたと思ったら途中で休憩に入った。こちらはゆっくりでも歩きつづける。高度が上がると気温が下がって適度に風を感じてさほど暑くはなくなった。前回ここを歩いたときは暑いどころではなく暴風雨で休憩もできないほどだったけど。新穂高から槍ヶ岳山荘まで休憩した記憶は無い。

 飛騨乗越に到着し左折して槍ヶ岳方面へ。ここまでくれば今夜の宿は近い。やがてテント場登場、ここは岩っぽい斜面に棚田のような細かい区画に分けられていて番号が付けられている。宿で幕営手続きをする際に宿側がどこの区画を使うのか指定する方式とのこと。槍ヶ岳山荘のテント場は狭いので、テントの大きさに応じて効率的にテント場を使うには仕方ないだろう。私は一人用の小さいテントなので、受付をしたら狭い場所の「12」を割り当てられた。

 テント場から僅かに登って槍ヶ岳山荘。さすがにでかい。そして槍もでかい。前回はガスが濃くて小屋の前から槍は影も形も見えないほどだった。小屋には下界でよく見ているライブカメラあり。幕営の手続きをするとテント場はトイレ代込みで\1000/1人だった。北アで幕営は数年ぶりだが料金体系が変わったらしい。トイレ料金用に100円硬貨を何枚も持ってきたのに残念。でも今の料金の方が適正だろう。

 テントを設営してまだお昼。時間も体力も余っているので槍の穂先に登ることに。明日朝一番も考えたが梯子渋滞の程度が予想できない。後から聞いた話では槍の穂先でご来光を迎える人=ヘッドライトの光で岩場と梯子を登る人はそれほどおらず、時間ロスは無かったようだ。

 通常の夏山ならお昼にはガスが上がってきて視界が閉ざされるのだが、今日は全くガスが上がる気配がない。雨の心配もなさそうだが念のためアタックサックにゴアを入れておく。見上げる槍には取り付いている登山者の姿があるが、登りは梯子で渋滞している。今日はもうやることはないので急ぐ必要もないしのんびり構えていい。

 槍の穂先へのルートは目印が豊富なので迷うことはない。一部区間が上り下りで分離し「複線化」されているのは渋滞対策だろう。岩場の通過には特に技術的に難しいところはなくスイスイと登れる。梯子は2箇所あるがいずれも頑丈で3点確保を確実にこなせば落ちることはないだろう。ただしもし落ちれば軽い怪我では済まない高さがあるが。

 2箇所の梯子の下でしばし待ち時間。直射日光に晒されるが適度な風があって暑さは感じない。やっと最後の梯子の順番が回ってきて登りきれば2度目の槍の穂先到着だ。

 前回は濃いガスで真白で何も見えなかったが今は大展望。真昼間なので空気の透明度は夜明けほどは良くなく、雲も湧いて南アは見ることはできないが北アはぐるりと見渡せた。つい目が行ってしまうのは硫黄尾根。赤岳ジャンダルム付近の真っ赤な崩壊地が壮絶だ。翌日、DJF氏が中山沢から地形図上の赤岳山頂の無雪期登頂に成功することなど知る由も無かった。

 やることがないので山頂で2時間近くまったりしてしまった。それほど広くない山頂なので大混雑時は長居するのは気が引けるが、今日の人出なら迷惑にはならない。ただし写真撮影ポイントのお社前だけは撮影待ちの行列ができていた。しかし時間経過とともにそれも解消した。山の日の明日、その翌日はどんな状況になるのか恐ろしい。

 充分に展望を楽しんだので下山。残った登山者は少ないので下りはスイスイだった。テントに戻ればやることはなく、昼寝して日が傾いてから一人酒盛りして寝た。結局、今日は槍ヶ岳にガスがかかることは無かった。夜はやや風はあったがそれほど強くはなく、テントに露が付くのを防いでくれたので助かった。

 翌朝は4時に出発。まずは双六小屋を目指す。まだ暗い槍を見上げるとライトの明かりは1つだけ。これなら今から登ってもいいかなぁとも考えたが、地平線付近は雲が多く日の出の光景はイマイチそうなのでパスした。どうせまた登る機会はあるだろう。

 ライトを付けて西鎌尾根を下り始める。鏡平の小屋の光が目立つが、西鎌尾根上の遠くにもライトの光。槍から下ったのか双六から来たのかは不明だが、どちらにしてもかなり早い時刻に行動開始したのは間違いないだろう。まだ暗い斜面をジグザグに下っていくと先行する若者二人パーティーを追い抜きどんどん距離を離していく。ここは森林限界で明るくなるのが早く、すぐにライト不要の明るさとなり歩きやすくなった。

 千丈乗越では双六方面からやってきた5,6人の高校生らしきパーティーとすれ違う。おそらくライトの主だろう。彼らは千丈乗越で休憩。こちらは通過。この時点では知らなかったが、この日のもう少し遅れた時刻にDJF氏がここを乗り越えて千丈沢に下り、無雪期赤岳登頂を果たしたのだった。

 この先を歩くのは久しぶりで、しかも前回はガスに覆われて展望皆無だったので記憶がほとんど無い。今回は前回歩いたときに左俣岳の正確な山頂を踏んだかの確認も目的の一つだ。同じような高さのピークがいくつかり、登山道はピークを巻いていたので適当に登ったが正確な山頂だったか記憶がイマイチなのであった。前回と違って今の読図能力なら山頂を間違える心配はない。槍ヶ岳から下っていくと、まとまった登り返しがあるピークであり、山頂には三角点があるからだ。ついでに今は快晴で遠望が効くため尾根全体の地形が見渡せるため、間違える可能性はまず無い。硫黄尾根が分岐するピークの一つ手前だ。

 途中、雷鳥親子を発見。先日の甲斐駒〜鋸岳の尾根で見た雷鳥と同じく子供は一羽のみ。野生動物の生存競争は世界は厳しい。

 左俣岳手前の鞍部には「左俣乗越」の標識が立っていた。ここから急な斜面を登り返し、ピーク付近で登山道は左に逃げて巻き始める。斜面は這松の海でどこかハイマツが切れたところが無いか探しながら歩いたが残念ながら見当たらない。仕方なくハイマツに突入。もちろん大ザックをデポして軽装でだ。面倒なので長ズボンを履かなかったら僅か10mほどのハイマツ帯で足が傷だらけになってしまった。せめてロングスパッツをしておけばよかった。

 尾根上に復帰すると北側はハイマツが切れて草付きで歩きやすいが急角度で落ち込んでいる。槍ヶ岳方向に僅かに戻るように登るとハイマツの海との境界に三角点を発見。ここが正確な左俣岳山頂だ。山頂標識は皆無、前回登ったときにハイマツ漕ぎをした記憶は無いので残念ながらここに立ったのは初めてだ。半分寝たハイマツなので視界を遮るものは無い。ここまで来れば硫黄尾根は目の前だが、尾根の伸びる方向から見る形になるのでピークが重なり合ってしまい地形が分からないのが残念だ。もちろん中山沢のコルは見えない。

 登山道に復帰して次の2680mピークにも空身で登って硫黄尾根の軽い偵察。こちらのピークはハイマツ皆無で簡単に登れたが、硫黄尾根の起点はこの2680m峰ではなく僅かに北側にずれた地点で、そこまではハイマツの海。このまま進むのは面倒なので、登山道に戻って硫黄尾根分岐点に近い浅い谷地形から再び登山道を外れて草付きの谷を登る。今度はハイマツに備えてゴアの長ズボンを履いた。すぐに砂礫の緩斜面に出て硫黄尾根に乗る。最初の2650m峰手前でまたハイマツだが南側直下が草付きなので距離を稼ぎ、ピークの登りだけはハイマツ漕ぎ。しかし北側はハイマツが薄いのでさほど苦労はない。残雪期でもこの付近はたっぷりと雪が残っているらしく踏跡は見られなかった。

 2650m峰に立つと赤岳のジャンダルム群までの様子が良く見える。出だしの左への尾根屈曲点は尾根が痩せていて雪が付いた時期はどうかなとも思えるが、もし左の硫黄沢に落ちても谷は緩やかで問題なさそう。逆に北側斜面から巻いてもいいかもしれなと思える地形だった。ジャンダルム群は重なり合い具体的な危険度の把握はできなかったが、草木皆無のあの崩れ方だからヤバさの予想は付く。私の計画では残雪期後期の中山沢から往復なのでこの区間を歩くことは無いと思うが、赤岳へのイメージは大きく膨らんだ。私の実力で山頂に登れるか分からないけど(笑)。

 再びハイマツを軽く漕いだり迂回して縦走路へ復帰。車道で言えばデコボコの酷い道から高速道路へ出たようなもの。道の良さの有難みが身にしみる。次の鞍部が硫黄乗越で硫黄沢は硫黄尾根とは逆に緩い斜面と広い谷で穏やかそうに見える。次の2720m峰はてっぺんを通らずに南側を巻き樅沢岳は山頂を目指して登っていく。

 傾斜が無くなれば広場と樅沢岳山頂標識が登場するが、明らかに奥に見える高みが山頂と思われるのでそちらに移動すると再び山頂標識登場。しかしその裏側のハイマツの高みが正確な山頂だろう。幸い、そちらに踏跡があって展望台と書かれた案内が出ていた。ほんの僅かでハイマツを抜けて砂礫地の樅沢岳山頂に到着。間違いなくここが一番高い。出発してからここまで休憩なしだったのでザックの上にひっくり返って休憩した。

 ここまで来れば本日の幕営地、三俣山荘は遠くはない。双六小屋を挟んだ反対側には緩やかな山頂の双六岳で、その右側には同じような高さの稜線が続き2つ目のピークが三俣蓮華岳。往路ではこの稜線は通らずに山腹を巻いてしまい、明日の朝の展望がいい時間帯に稜線歩きの予定だ。

 休憩を終えて双六小屋へ向かう。この下りは適度な傾斜で快調に歩ける。この時間帯では槍方向から下ってくる人はほぼ皆無だが登ってくる人は多い。もしかしたら今朝新穂高を出発した人が含まれているかもしれない。

 双六小屋は幕営したことが無く水場がどこにあるのかちょっと心配だったが小屋の前に水道が設置されていた。昨日の槍ヶ岳山荘では西鎌尾根縦走で荷物にならないよう必要最低限しか水を購入していなかったため、日中の行動用水が不足気味だったので助かった。槍と違ってここは裏山が自然の水源なので水は無料であった。小屋の前ではたくさんの人がたむろしていた。テントの数はまだ少ないが、今日の夕方には満杯になるかな。

 樅沢岳で休憩したので双六小屋では休憩せず給水だけして出発。いきなりきつい登りだ。しかも背後から強い直射日光で暑い! 天気が良すぎるのも考え物だ。傾斜が緩むと広大な緩斜面で巻道分岐が登場、ここは右に進む。これから歩くであろう登山道が山腹に長く刻まれているのが見える。残念ながらアップダウンは皆無ではなく、特に三俣蓮華岳直下ではまとまった登りがあるようだ。エアリアマップではカールの中に沢が流れているらしいので汗臭くなった濡れタオルを洗濯しよう。

 巻道も良好な道が続く。時期によっては谷筋に残雪が見られるようだが今年は皆無。稜線直下の雪庇溶け残りの雪田があるくらいでカールに水が流れているかちょっと心配になる。まあ、三俣山荘に到着すれば水は豊富だから心配ないか。行動用水は双六で確保済み。

 細かく緩やかなアップダウンを繰り返し、双六岳と丸山鞍部から東の伸びる谷に到着すると水が流れていた。よかったぁ。冷たい水で顔を洗い濡れタオルも洗って全身の汗を拭えば爽快感を取り戻し涼しさ倍増だ。この頃には反対側からやってくる登山者だけではなく軽装で三俣山荘方向に向かう登山者に追い越される場面も。もしかしたら今日、新穂高から入山した人かもしれない。今日は山の日で祝日、おまけにお盆シーズン、しかも安定した天候が期待され、かなりの人が入ることが予想される。深山荘奥の無料駐車場はとっくにいっぱいだろう。

 今日は急ぐほどの行程ではないし、三俣山荘到着まであと1時間程度だろう。優良テント場確保も心配する時刻ではないし、普通の登山者なら今日入山すると三俣山荘まで届かないのでテント場が目茶混みすることもないだろう。せっかく拭った汗が無駄にならないようのんびり歩く。相変わらず日差しは強いが北寄りの風が吹き抜けて体感的には昨日より涼しい。稜線ならもっと涼しいだろうな。

 三俣蓮華岳との分岐点である三俣峠までは登りが続く。右手には硫黄尾根が再びよく見えるようになり写真撮影。この頃にDJF氏は中山沢を登っている最中だったようだ。残念ながら中山沢はここからだと硫黄尾根の裏側になるので見ることはできない。

 三俣峠から三俣山荘に向けて下りにかかる。一部のみハイマツのトンネルで日差しが遮られるが、基本的な植生は森林限界で日差しに焼かれながら歩くことになる。ハイマツのトンネルが終わると眼下に三俣山荘のテント場が見えてくる。ここは何度か通過したことがあるがテント泊まりは初めてなのでテント場の状況は知らなかったが、登山道に沿って細長く広く分散しているようだ。左手には僅かに雪渓が残っている。あれが水源かな?と思ったが、右側から小さな沢が流れ込んだ場所が水場だった。

 河原のような石がゴロゴロした登山道を下るとテント場の最上部に到着。しかし土地が斜めなのでもう少し下ってみることに。やがて広い平坦地が登場、真中には小川が流れている。この小川がテント場の水源らしい。周辺を探索して一人用テントに適度な広さの場所で、できるだけ周囲のテントから独立した場所を確保する。そこは小屋へ一番近い場所でもあった。

 背丈を越えるハイマツの切り開かれた登山道を水平に進むと三俣山荘に到着、幕営の手続きを行う。白馬や槍と同じく料金はトイレ使用料込みで\1000/1人だった。ここは珍しくテント泊用のトイレは存在せず、小屋の中のトイレを使うようにとのことだった。これは初めての経験だ。

 テント設営後、しばし休んでから鷲羽岳に向かおうと考えてテントの中で横になったが、日差しが強くテントの中は温室状態で周囲のハイマツのおかげで風も無く暑すぎた! 西日がハイマツで遮られる場所を選んだのだが日中の日の高さでは影ができなかった。あまりに暑いのでたまらず起きだし、予定より早いが鷲羽岳を目指すことにした。この天気では防寒は考えなくてもいいだろうが、念のために雨対策としてゴアは持っていく。

 テントを出てハイマツの壁が連なる道を通過して三俣山荘に出ると風通しが良くなり強制風冷が気持ちいい! しかし山荘からさらに進むと登山道は尾根上から東直下に逃げてしまい、北西の風は尾根にブロックされて登山道まで届かなくなるのに日差しだけはあって再び暑くなる。

 伊藤新道跡は鷲羽岳の南斜面に今でも明瞭に残っているが、その起点は不明瞭だ。野生動物撮影用カメラがある場所が起点で、薄い踏跡が斜め右に下っている。おそらく沢まではそこそこ明瞭なまま道が残っていると思うが、沢沿いの道は壊滅状態らしい。水量が少ない時期に沢登りで歩くのには面白そうだ。どうせなら硫黄沢とかも見てみたい。

 尾根上に復帰すると風が吹き抜けて涼しいところか意外に風が強くて立ち止まったままだと寒いくらいで腕カバーを装着。この時刻になると山頂方向から次々と登山者が下ってくる。裏銀座縦走組か、それとも雲の平からか。傾斜はそれなりにきつく普通に歩いてもスピードは上がらないが、汗をかかない程度に運動量を抑えているのでのんびりペースだ。昨日に引き続き真昼間でもガスが上がってくる気配は無く、あのままテントの中にいても暑くて寝られなっただろう。

 登りきって鷲羽岳山頂到着。これでたぶん3度目の山頂だろうか。多少雲が湧いているが昼間にして格別の展望といえよう。ここまで来ると水晶岳は近く、おそらく双六ベースで軽装で水晶岳往復なんて人もいるだろう。山頂から少し南にずれると眼下には鷲羽池。ここは火山ではないと思うがどうやってこんな地形になったのか不思議だ。その向こう側には硫黄尾根。私が鷲羽岳山頂で休憩している間はまさにDJF氏が赤岳にアタックしている最中だった。それとは別に私と同じルートで無雪期の硫黄岳にアタックした登山者が2人いたとこと。珍しく千丈沢が賑わったようだ。

 鷲羽岳山頂は風が強く、日差しがあっても体感的には少し寒いくらいで助かった。これで横になって昼寝できれば最高なのだが。登山者がポツポツとやってきては写真撮影、小休止して去っていく。こちらはテントに戻っても暑いしやることがないので山頂で長時間時間をつぶす。今日も天候の崩れは来そうになく、夕方まで太陽が出ていそうだ。

 最後は本日新穂高から入山して三俣山荘で宿泊し、明日は水晶岳、黒部五郎岳を往復するという健脚な青年としゃべりながら下山。1日でここまで来るには相当な体力消耗があったはずで、鷲羽岳の下山で彼はゆっくりだったためこちらも合わせてのんびりと歩く。時々硫黄尾根の写真撮影。こちらから写真撮影する場合は西日の方が日の当たり方が良好で岩肌がはっきりと見える。逆に朝は日影になってしまうのでいい写真は撮影できない。

 山荘で彼と別れて私はテント場へ。全体的にはテントは増えていると思うが増加分は小屋から離れた場所が多かったようで、私の周辺ではそれほどテントは増えなかった。結局、風はやや強かったがこの日もずっと天候はいいままだった。私がテントを立てた場所はハイマツで風がブロックされ快適だったが、ちょっとくらい風があった方がテントに露が付かなくていいのだが。

 翌朝も満天の星空。朝飯を食ってまだ暗い4時過ぎに出発。鷲羽岳への登りには点々とライトの光が見えている。この時刻なら山頂で日の出を迎えられるだろう。こちらは本日は下山の日なので逆方向の新穂高へと向かう。

 まだ暗い中を三俣蓮華岳へと登って行くと軽装の人が下ってくる。おそらく双六小屋から水晶岳を往復するのだろう。この時間にここにいるとなると双六小屋を出発したのは3時くらいではなかろうか。ご苦労様。河原のような石ゴロゴロの道は暗闇の下りでは特に歩きにくいだろう。

 ハイマツのトンネルを抜けると周囲は徐々に明るくなりライト不要になった。三俣峠からは巻道ではなく三俣蓮華岳山頂を目指す。どうせ双六から新穂高に下るので巻道で楽をしてもいいが、この天気でこの時刻なら展望が楽しめるのは間違いなく、稜線歩きをしないのはもったいない。

 峠からは急な登りが続いて苦しいが、背面の東の空は徐々に赤く染まって日の出間近の雰囲気。先行する男性の姿は山頂近くまで達していた。彼は日の出にギリギリ間に合うだろうか。そしてまもなく日の出で斜面が赤く照らされた。今日も好天で暑くなりそうだ。

 すぐに三俣蓮華岳山頂に到着。広くなだらかな山頂で近くの山は地面に隠れてしまうほど。位置をずらしながら展望を楽しむ。北には立山、剱岳。ここから見るといつもと位置関係が逆で剱岳が左側に見えている。南を見ると双六岳や穂高が高くもっと南側にある南アや中アを隠してしまっている。北アでも奥地のここは南アからでも見えなかったからなぁ。北西の風がやや強く体温を奪われるので長袖シャツを着てネックウォーマーと毛糸の帽子を被りながらの展望だった。

 ここは黒部五郎岳への縦走路との合流点でもあり、そちらに下っていく登山者も半数くらいいた。昨日、鷲羽岳山頂で会った若者も今日はそちらへ向かうのだろう。ラジオの天気予報ではまだ数日間は好天が続きそうで、今年のお盆休み期間は長期縦走には大当たりの年だ。

 私は南に折れて双六岳を目指す。正面に見えているのっぺりとした山は丸山で、双六岳はその裏側だ。大きなアップダウンはなく、この時間はまだ暑くもなく快適な稜線歩きが楽しめる時間帯だ。緩やかに下って丸山は正確なピークは僅かに東側を巻いてしまう。次の鞍部で中道分岐。双六岳山頂を通らずに双六小屋へ達するルートだが当然パスして山頂を目指す。この時刻になると双六小屋発の登山者と次々とすれ違う。西側には板戸岳。誰も見てないだろうなぁ。山頂部は樹林が開けて淡い緑色になっているのが分かる。確か低い笹だったような記憶がある。

 まとまった登りをこなすと双六岳山頂に到着。ここも広い山頂であるが、双六小屋発の登山者で賑わっていた。またここは風がかなり強く体感温度は寒いくらいで、岩の陰に隠れて急いで防寒装備を着用する。カメラを構えても風で体がふらつくくらいであった。南にはかろうじて中央アルプス南部が見えていたが、やはり南アは穂高の影に隠れて見ることはできなかった。

 これで今回の山行での山頂はおしまい。いよいよ下山だ。双六小屋へと下っていくとすれ違う登山者は多い。双六小屋も人がいっぱい。テント場もまだ結構な数のテントが残っているが、この時間だから遅い出発というよりもここをベースに軽装で各所に散っているのだろう。

 新穂高方面に向けて谷筋に入ると日陰で涼しい。この時間ですれ違う人もいるが、今朝新穂高を出発した人だろうか。私と同じく下山の方向の人もちらほらと見える。樅沢岳〜弓折岳を結ぶ尾根に乗ると再び日に焼かれて暑い! 双六岳の強風がここでは嘘のように穏やか。いや、これは地形的な原因ではなく、ただ単に時間経過で風が収まっただけかもしれない。風がない中を直射日光に炙られながら歩くのはきついだろうなぁ。こちらはもう下りだからマシだが。

 笠ヶ岳方面との分岐は尾根上ではなく南に僅かに下った場所にあり「弓折中段」との標識があり休憩する人の姿が。しかし既に森林限界を超えて日影が無いのが残念。こちらは休憩は日影でしたいのでここは素通りとする。

 鏡平へと続く尾根を下っていくと登ってくる登山者と続々とすれ違う。たぶん昨日も入山者が多かったと思うが今日も凄い数だ。上高地のような広い道(林道)ならすれ違いに問題はないが、ここは狭い登山道なので登り優先でこちらが道を譲る場面が多くスピードが上がらないが、適度な休息となって足の疲労はほとんど感じない。鏡平に到着して休憩しようかとも思ったがここにも日影は無く、腹は減ったがそれほど疲れていないので樹林帯で日影がある場所を探して休憩することにして先に進む。

 昔は登山道があった大ノマ岳へと谷間を直登するルートは既に廃道で一面草に覆われていた。ここは「シシウドヶ原」との標識あり。前回、ここを歩いたのは板戸岳に登ったときのはずなので、この付近は一面残雪+季節はずれの新雪に覆われていたはずだ。あの時はこの谷を直登したので鏡平は通過していない。

 徐々に木の高さは高くなりカール状の広い谷筋を下っていくと所々で木影が見られるようになるが、まだ足の疲れはそれほどでもないので歩き続ける。相変わらず登ってくる人はひっきりなしで凄い人数だ。水が流れている秩父沢では多数の人が休憩中。前回この付近を歩いたときは秩父沢はデブリで埋め尽くされていたと思う。その他の西から落ちる小さな沢もみんなデブリが押し出してそれらを乗り越えた記憶がある。あの時は寒いくらいで今の暑さよりずっと快適だったなぁ。この暑さの中を登るのは大変だろう。

 さらに高度を下げて左俣谷と登山道が接する個所で水浴び。汗まみれの腕顔を洗って濡れタオルを沢で洗い、全身の汗を拭き取れば爽快感抜群! この時刻になると登りの登山者の姿は徐々に減ってきた。

 左俣林道に到着。最後にここを通ったのは下丸山に登ったときか。何年前だろう? あの時も残雪期で林道にはまだ雪がありデブリを乗り越えたような記憶が。本格的に腹が減ったので林道脇の木陰で休憩。まだ標高はそれなりにあるので日影で体を休めた状態なら十分に涼しい。ザックに残った最後の食料を食いつくして出発。林道を行き交う人はチラホラ程度だった。

 休憩場所を出発してすぐにわさび平小屋だった。ここは売店でもありビール調達が可能だが、これから車の運転が待っているのでぐっと我慢する。ここまで下ると人里の匂いが濃くなってくる。

 鏡平から下山中に何度もヘリが往復していたが、林道脇にヘリの荷上げ基地があった。止まっている車は農協や卵の卸業者で、どうやら山小屋へ生鮮食品を上げているようだ。お盆休みだからこれから1週間くらいはかなりの宿泊者数で食料の消費もかなりな量になるだろう。天気がいい日でないとヘリを飛ばせないので、まとめて荷上げしているのだと思う。

 林道はできるだけ日影を選んで進んでいく。笠新道入口には水が出ていた。残雪期は出ていなかったように記憶している。そのうちまたここを登ることもあるかな。発電用取水堰下流にある中崎橋はいつの間にか路面が傾いていて注意書きの看板があった。雪の重みが原因? 林道のカーブでは積み重なった石の隙間から涼しい風が吹き出ていてちょっとびっくり。こんな場所があったとは知らなかった。

 右に穴毛槍を見上げながら林道を下り、穴毛沢へとつながる林道分岐を見送れば新穂高は近い。林道ゲート横をすり抜ければもう下界。驚いたことに右側のホテルの駐車場には山ねずみ氏の車があった。南アルプスで本人を見たことがあるが車を見たのは初めて。昔と車は変わっていて以前より派手さも少し控えめのようだ。今頃どの辺りを歩いているのだろうか。

 新穂高の有料駐車場は満杯状態で、林道脇に路駐が見られたが大丈夫だろうか。登山指導所前の有料駐車場も満杯状態。県道路側に駐車する車もあったが駐車禁止の黄色いステッカーが貼られていた。

 県道から無料駐車場へと続く歩道に入れば再び日影となって快適。車に戻る前に日当たりのいい河原でテントとシュラフの虫干し。木陰もあるのでテントだけ日向に出して人間は日陰で休める。でも休む前に人間様は水浴び。適度な水温で足を流れに漬けると心地いい。河原には釣り人がいるが、私みたいに川でじゃばじゃばやってる人間がいると魚が逃げて釣れなくなっちゃうかな。

 テントが乾いたので撤収し車へ。さすがに駐車場は満杯で空きがない。入ってくる車が無いので入口が閉鎖されているのだろう。私が車内の荷物整理をしている間に数人の登山者が下ってきたので、この後すぐに数台分の空きができるだろう。着替えが終わって車を走らせると駐車場入口は車止めされて監視人がいた。監視員は車止めをどかしてくれて、駐車場に空きができたかとの質問だったので、少なくとも私の1台分は空きができたこと、この後すぐに数台分の空きができそうなことを伝えた。


 こうして好天に恵まれた2泊3日が終わった。久しぶりの槍は今度こそ好天に恵まれて展望を楽しめて大満足。次は大キレット縦走のリベンジを考えたいが、危険個所のオバサン渋滞を避けるにはいつがいいかよく考えないと。

 

山域別2000m峰リストに戻る

 

ホームページトップに戻る